Kotonoha 言の葉だより 第三章「大切なものを守るために」葬儀費用編

第三章「大切なものを守るために」葬儀費用編

事件簿 2.

「24万円積み立てたのに、葬儀で使えなかった。」

―その備え、家族はどこまで知っていますか?―

「自分の葬儀代くらいは、準備しておきたい。」
家族に迷惑をかけたくないという思いから、少しずつお金を積み立てる。
ところが、いざというときに、その積立金が使えなかったとしたら……。
今回は、国民生活センターに実際に持ち込まれた、冠婚葬祭互助会のトラブルからお話を始めます。


🌸 事件簿|24万円の積立金をめぐるトラブル

2013年、ある人が知人の勧誘で冠婚葬祭互助会に加入しました。
掛金は月2,000円。
本人は、銀行の積立預金のようなものだと思っていたといいます。

翌2014年、母親が亡くなり、喪主として葬儀を行うことになりました。

ところが、利用した葬儀会場では、加入していた互助会の契約を使うことができませんでした。
互助会を利用できる会場が限られていることを、そのとき初めて知ったのです。

その後、契約を解約しようとしましたが、手続きや返金額をめぐって問題が生じました。

2023年、満期の通知を受けたあとに確認すると、積立総額24万円に対し、解約手数料は約4万円。
返金額は約20万円になるという内容でした。
本人は納得できず、消費生活センターに相談。
最終的には、国民生活センターの紛争解決手続きを通じて、事業者側が約2万円を差し引いた約22万円の返金を提案し、本人が受け入れました。

なお、契約時の説明については双方の認識が異なっており、事業者側は説明と書面交付を行ったと主張しています。

※国民生活センター公表の実際の紛争事例です。

🌸 互助会は、どこの葬儀場でも使えるわけではない

冠婚葬祭互助会は、銀行の預貯金とは違います。
将来、契約に定められた冠婚葬祭サービスを利用するために、掛金を支払う仕組みです。
そのため、利用できる葬儀場やサービスの範囲が決まっている場合があります。

・例えば、引っ越しをした場合。
近くに利用できる葬儀場があるでしょうか。
利用できても、家族が移動するには遠すぎないでしょうか。

・県境にお住まいの場合、隣の県の葬儀場の方が近いこともあります。
そんなとき、県をまたいでも契約した互助会のサービスを利用できるのでしょうか。
利用できる場合でも、契約内容や費用に違いはないでしょうか。

・そもそも、転居先に利用できる葬儀場がない可能性もあります。

こうした条件は、互助会や契約内容によって異なります。
また、条件が合えば、別の互助会へ契約を移籍できる場合もあります。
解約する前に、利用可能な施設や移籍制度について確認することが大切です。

🌸 解約すれば、積立金は全額戻る?

ここも、誤解しやすいところです。
互助会の掛金は預貯金ではないため、サービスを利用せずに解約すると、契約に応じた解約手数料が差し引かれることがあります。

ただし、手数料の金額や計算方法は契約によって異なります。
「満期になったから全額戻る」と思い込まず、契約書や約款を確認しましょう。

そして、互助会の積立金だけで葬儀費用のすべてをまかなえるとは限りません。
料理、返礼品、施設使用料など、契約に含まれない費用が発生する場合もあります。

🌸 葬儀費用を準備する方法は、互助会だけではありません

葬儀費用の備え方には、預貯金や生命保険などもあります。

2026年、埼玉県在住の50〜70代150人を対象に行われた調査では、次のような結果が出ています。

  • 預貯金 60.0%
  • 生命保険の死亡保険金 34.0%
  • 互助会の月掛積立 12.7%
  • 葬儀保険 2.7%

※複数回答。埼玉県の150人を対象とした民間調査であり、全国の加入率を示すものではありません。

「互助会」
契約した葬儀会社などで、契約内容に応じた葬儀サービスを利用するためのものです。
利用できる葬儀場の場所、契約に含まれるサービス、追加費用の有無、解約時の返金条件を確認しておきましょう。

「生命保険や葬儀保険」
契約条件を満たした場合に、保険金を受け取る仕組みです。
受取人が誰なのか、どのような請求手続きが必要なのかを確認しておきましょう。

「預貯金」
用途を決めずに準備することができますが、亡くなった方の口座については、相続手続きなどが必要になる場合があります。
口座のある金融機関や通帳などの保管場所を整理しておきましょう。

どの方法が一番よいかは、人によって違います。
大切なのは、仕組みを理解して準備することだと思います。

そして、もうひとつあります。

🌸 家族と十分に話せていない人が、78%

先ほどの調査では、葬儀費用の準備や希望について、家族とどの程度話しているかも尋ねています。
その結果、
「一度も話していない」36.7%。
「話題には出たが、深くは話していない」41.3%。
合わせて78%。
さらに、書面やエンディングノートなどで家族に情報を共有していた人は、わずか4%でした。
※調査対象は埼玉県在住の150人です。

この数字を見て、少し考えてみてください。

・もし、ご家族が互助会の契約を知らなかったら。
・もし、生命保険に加入していることを知らなかったら。
・もし、預貯金や保険証券がどこにあるのか分からなかったら。
せっかく準備したお金や契約が、必要なときに生かせないかもしれません。

※これらは情報共有がない場合に考えられる状況であり、冒頭の紛争事例とは別の説明です。

🌸 ここで役立つ、エンディングノート

エンディングノートは、家族への気持ちを書くためだけのものではありません。
例えば、
・互助会の契約先や契約番号。
・保険会社、保険証券の保管場所、保険金の受取人。
・預貯金の情報。
・各種サービスのIDやパスワード。
・葬儀についての希望や、連絡してほしい人。
こうした情報を整理して残すことで、家族が必要な手続きを進めるための手がかりになります。
ただし、IDやパスワードなどの大切な情報を記載する場合は、ノートの保管方法にも十分な配慮が必要です。
また、エンディングノートに書いたからといって、保険契約の内容や受取人が変更されるわけではありません。

想いは動画に、情報はノートに。

言の葉では、声や表情で伝えたい想いと、家族が必要とする実務的な情報を、それぞれの形で残すことを大切にしています。

🌸 今回のまとめ

互助会は、利用できる場所や契約条件を確認しましょう。

保険や預貯金も、それぞれの仕組みを理解して備えましょう。

準備した情報は、家族が分かる形で残しておきましょう。


🌸 編集後記

家族に迷惑をかけたくない。
そう思って準備をしていても、いざというとき、家族がその存在を知らなければ困ってしまうことがあります。
お金を残すことも大切です。
でも、どこに何があるのかを伝えておくことも、同じくらい大切なのではないでしょうか。

葬儀の準備は、金額だけの問題ではありません。
家族が迷わず、安心して見送れるようにすること。
それも、終活の大切な役割だと思います。


📚 情報源

① 国民生活センター
「国民生活センターADRの実施状況と結果概要について(令和5年度第4回)」
2024年3月27日公表
【事案16】互助会の解約に関する紛争(7)

【裏付ける内容】
月2,000円の互助会に加入し、積立総額24万円に達したものの、母親の葬儀で契約を利用できなかった事例。解約時に約4万円の手数料が提示され、最終的に約2万円を差し引いた約22万円の返金で合意したという紛争の経緯。

https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20240327_2.pdf


② 経済産業省
「前払式取引」

【裏付ける内容】
冠婚葬祭互助会は、将来の冠婚葬祭サービスの提供を受けるために、あらかじめ掛金を支払う契約であること。銀行の預貯金とは仕組みが異なること。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/consumer/credit/maebarai.html


③ 近畿経済産業局
「消費者相談事例/互助会の解約について」

【裏付ける内容】
転居によって契約した互助会のサービスを利用しにくくなる場合があることや、解約時の返金額・手数料について相談が寄せられていること。

https://www.kansai.meti.go.jp/4syokei/soudan/jirei/jirei8_1.html


④ アルファクラブ武蔵野株式会社
「葬儀費用の準備方法と事前積立経験者の満足度調査」
2026年5月調査/埼玉県在住50〜70代150人対象

【裏付ける内容】
・葬儀費用の準備方法に関する調査結果(挿絵①)
・葬儀費用の準備や希望について、家族との話し合い・情報共有に関する調査結果(挿絵②)

※葬儀関連企業による地域限定の民間調査です。全国の割合を示すものではありません。